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偏西風の風下に位置する太平洋北部亜寒帯域において大気中水銀濃度を観測し、大気への水銀放出量が多いアジア地域からの輸送の実態について調べた。濃度の観測には原子吸光方式と原子蛍光方式のモニターを使用し、船上での観測方法についても検討した。また、同時に大気-海洋間の水銀フラックスも観測した。船上での大気中水銀濃度の計測には原子蛍光方式が適しており、航海中の平均濃度は1.54 ± 0.18 ng m-3であった。この値は陸域のバックグラウンドの濃度と同程度である。北緯47°、西経170°~165°でやや高い傾向がみられたが、同海域の水銀フラックスは放出ではなく吸収であったため、海洋からの水銀放出により濃度が高くなっている可能性は低かった。後方流跡線解析の結果、高い濃度が観測されたときには南から大気が輸送されていたため、南方にある放出源からの移流による影響の可能性が示唆される。