抄録
目的 2009年に発生した新型インフルエンザ(H1N1)の国内初発事例を経験した神戸市と遅れて発生した茨城県の電話相談件数や医療体制を比較し,国の新型インフルエンザ対策行動計画やガイドライン改定にあたり,地域で感染症対策を担当している立場から提言を行う。
方法 神戸市が行った電話相談や受診状況について,5~12月をI~IVの 4 期間に分けて分析した。I期について,発熱相談および発熱外来の利用実数の累積数に近似する成長曲線を求めた。また,1 か月後に県内初発患者が発生した茨城県の新型インフルエンザ確定患者数は神戸市とほぼ同数であったので,電話相談件数や医療体制を比較した。
結果 I期の 1 か月間に神戸市が受理した電話相談は30,067件,その内容は「渡航歴が無いが体調が悪い」という訴えが多かった。発熱相談センターおよび発熱外来利用実数の累積は,いずれも「遅れ S 字曲線」で近似できた。一日2,000件以上の相談内容は,一般医療機関受診勧奨(40%),発熱外来誘導(8%),その他は自宅療養指導,不安や苦情であった。II期の 7 月末には相談件数が一日20件未満と最少となった。III期の 8 月に死亡者の報告や 2 学期から学校等で集団発生があり,一日当たりの相談件数が100件以上に増加した。IV期の11月には一日約500件の電話があり,その内容はワクチン関係だった。茨城県と神戸市を比較すると,7 月までの電話相談は茨城県22,483件(一日最多850件),神戸市33,661件(一日最多2,678件)で,茨城県の相談および発熱外来患者は一時期に集中しなかった。
結論 2009年の新型インフルエンザは地域によって発生状況が異なり,相談や受診件数の推移も異なっていた。インフルエンザに限らず新たな感染症発生時には,地域の実情に応じた対策を行うべきである。