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水素は次世代のクリーンエネルギーとして期待されているが、利用に伴うリークによって大気中水素濃度が増加し、間接的に地球温暖化や成層圏オゾン層破壊に寄与する可能性が指摘されている。水素の利用が地球大気に与える影響を評価するために、現在の全球水素収支のより精確な把握とリークを定量的に検出する手法の確立が望まれる。本研究では水素の起源推定に有効な安定同位体比を簡便に測定する方法の開発を試みた。2種のモレキュラ―シーブと寒剤を用いて水素と大気主成分の分離および濃縮を行いGC-IRMSに導入することにより、100ppm-1%程度の濃度の水素を含む試料の分析を可能にした。この方法を水素供給法の一つとして期待されている水の電気分解で生成した気体試料に適用したところ、約-700‰ (VSMOW)という低い値が得られ、水との間の分別係数が約0.3であることが明らかになった。