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水圏においてプランクトンは食物連鎖の低次に位置にし、その微量元素濃度は、生体要求量だけでなく環境下での利用可能性を反映する。ネット採取試料のバルク組成での評価は、器官ごとの濃縮の違いや鉱物などの非生物粒子を区別しないため、プランクトンが元素循環において果たす役割を説明するうえで情報に乏しい。そのため、本研究では放射光X線マイクロビームを用いた個体別元素濃度定量を目指し、μ-SXRFを用いたプランクトン個体別元素マッピング、μ-SXRFおよびICP質量分析器による生物観察汎用の固定試薬浸漬による微量元素濃度への影響評価を行った。結果、S, P, Caなど生体で一般的に存在比が高い元素は種を問わず検出された一方で、蛍光X線のエネルギーが小さく得られたシグナルは少なかった。試料-検出器間の減衰を差し引いた真の蛍光強度の算出法確立と濃度定量が今後の課題である。