フロンに起因するオゾン層破壊への警告から40年以上が経ち、「サイエンスとしてやることがまだ残っているのですか?」と聞かれることがある。実際、世界中の多くの研究者たちの見解をまとめたオゾン層破壊の科学アセスメントの最新版(WMO, 2018)によると、「オゾン破壊物質の規制が奏功し、大気中のオゾン破壊物質の量が減少してきたことで成層圏オゾンの回復は既に始まっており、今世紀半ばには回復するだろう」と予想されている。ただ、研究のピークはだいぶ前に過ぎているものの、残された課題と新たに出てきた課題があり興味が尽きない。本講演では、オゾン破壊物質に関する最近の研究を簡単にレビューすると共に、発表者が取り組んでいる熱帯樹木の生物活動や熱帯泥炭林の火災によるオゾン破壊物質の放出について紹介する。