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陸上高等植物に由来するテルペノイドは植物分類によって多様な構造を持ち、その起源をより限定できるため、陸源物質の海洋への輸送過程、その供給源や後背地の植生などを評価するための強力な指標となり得る。深海堆積物には現生植物が生合成する官能基をもった生体テルペノイドがおもに検出されるが、続成・熟成作用を受けたテルペン炭化水素のような続成テルペノイドも極微量ながら有意に見出される。このような続成テルペノイドは、中国内陸部の砂漠地域などの後背地において続成作用を受けた高熟成堆積岩・土壌を供給源としていて、大気輸送ダストとして太平洋にもたらされていることが推定されている。また、森林火災などの燃焼によってもテルペン炭化水素が生成され、おもに大気経由で海洋に輸送されている。本講演では、北太平洋と北大西洋の堆積物中でのテルペン炭化水素を比較して、それらの起源と輸送過程、さらにそれらを用いた大気輸送指標および古気候学指標としての有用性について議論する。