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ハプト藻イソクリシス目Noëlaerhabdaceae科が合成する長鎖アルケノンの不飽和度は、海洋表層水温の指標として広く利用されてきた。一方、湖沼に生息するIsochrydaceae科由来のアルケノン温度計を湖沼堆積物コアへ応用した例は少ない。今回の発表では、湖沼アルケノンを用いた古環境研究の現状と問題点について整理を行い、今後の発展に必要な事項について議論したい。 ハプト藻の単離株の培養実験より、IsochrydaceaeはNoëlaerhabdaceaeに比べて遺伝的多様性が大きく、種間でアルケノン組成の特徴および温度換算式が大きく異なる。環境DNA分析により、湖によっては異なる遺伝的グループにまたがるハプト藻の遺伝子が混在することが明らかになり、温度換算式の選択が難しいことが最大の課題である。 本発表では、新たに発見された、青森県鷹保沼(汽水)および秋田県一の目潟(淡水)のアルケノンの特徴およびについても報告を行い、これらの湖沼で温度復元が可能かどうか検討する。