p. 95-
陸域圏における主要なメタン放出源のひとつに湖沼が挙げられる.湖沼から放出されるメタンは,湖底の嫌気的な堆積物に生息するメタン生成アーキアによって生成されると考えられている一方,湖水中の好気的条件下でも光合成生物とメタン生成アーキアの共生による,メタン生成の可能性が示唆されている.我々は,表層水圏および深部地下圏に起源を有するメタンサイクルを明らかにするために,湖沼からの活発なメタン湧出が観察され,大規模なシアノバクテリアブルームが発生する諏訪湖に着目した.本研究では,アオコおよび表層堆積物中の微生物群集構造解析,メタン生成アーキア由来のバイオマーカーである補酵素F430の定量分析を行い,メタン生成アーキアの存在と菌数密度の予察評価を行った.さらに,メタン分子レベルの放射性炭素同位体比分析を併せて行い,表層水圏および深部地下圏のメタンサイクルの解明を進めていく予定である.