大気エアロゾル中の人為燃焼起源鉄は、地殻平均に対して4‰程度低い鉄安定同位体比を示すことが報告されている。これは気化に伴う同位体分別によるものと考えられるが、大気中への気化を経た鉄の供給源としては火山活動も該当する。本研究では、粒径別に採取した火山起源エアロゾルが低い鉄安定同位体比を示すかを明らかにすることを目的に、阿蘇山火口にて粒径別7分画で採取したエアロゾル試料の化学分析を実施した。鉄安定同位体比は粗大粒子では地殻平均に近い0-0.2‰を示し、微小粒子では-0.3~-0.5‰を示した。人為起源エアロゾルほどの低い同位体比は認められないが、その粒径依存性は人為起源エアロゾルと同様であり、微小粒子の鉄安定同位体比は火山からの気化成分を反映している可能性がある。また、鉄に比べて揮発性が高い亜鉛も同時に分析し、気化による同位体分別効果にその揮発性の違いが反映されるかについても検証した。