黒潮域の基礎生産におよぼす大気起源窒素の影響を調査するため、2015年秋季の黒潮域において採取した大気試料中の無機態窒素成分の濃度から、同海域への大気起源窒素の乾性沈着フラックスを推定した。大気エアロゾル中で、硝酸は主に粗大粒子、アンモニウムは主に微小粒子として存在し、アジア大陸からの気塊が到達した期間に高い濃度が観測された。エアロゾルの乾性沈着による窒素沈着フラックスは、平均で1日1平方メートルあたり0.48 mgNと推定された。仮に黒潮域の植物プランクトンによる基礎生産が窒素のみに制限されており、大気からもたらされる窒素の全てが基礎生産に使われると仮定すると、大気起源窒素による炭素の取り込みはレッドフィールド比を用いて1日1平方メートルあたり3.7 mgCと見積もられた。