イラン北西部の地域にはジュラ系~白亜系の石灰岩が広く分布するとともに、第三紀〜第四紀に形成されたトラバーチン(石灰岩質沈殿岩)も広く産出する。この地域は第三紀~第四紀の火山活動が活発であり、金属・非金属の鉱床も多く存在する。この地域のトラバーチン湧水(地下水)にはヒ素などの重金属元素を高濃度に含むものがある。生活環境や健康の面からの水質調査が行われているが、この地域のトラバーチン湧水のヒ素を含む様々な溶存元素についての詳細な地球化学的検討はなされていない。本研究では、イラン北西部地域のトラバーチン湧水の溶存元素の起源解析を主要・微量元素の定量分析と同位体分析を利用して行った。その結果、湧水中のヒ素濃度は、鉄や硫酸濃度との相関関係が見られ、特に火成活動が活発な地域においてヒ素濃度が高いことが明らかとなった。