火山ガス中のヘリウム同位体比は地殻とマグマの寄与率に応じて変動するため,火山活動を監視する指標として有用である。火山活動の監視には連続的な分析が必要となるが,ヘリウム同位体比の測定には高い質量分解能と感度が必要なことから大型の磁場型質量分析計が用いられており,連続分析は困難である。我々は,可搬型・高質量分解能のマルチターン飛行時間型質量分析計(MULTUM)を用いた新しい希ガス分析手法を開発している。従来型のMULTUMでは微量の3Heの検出は不可能であったが,質量分析計を真空ポンプから分離して気体分子を装置内に滞留させる「静作動方式」とパルスカウンティング法を導入したところ,火山ガス資料と同程度の量の標準ガス中の3Heを検出することに成功した。磁場型質量分析計の感度にはまだ及ばないが, 3Heのカウント数を蓄積させることで,十分な精度でのヘリウム同位体比の測定が可能になると考えられる。