本研究では青森県津軽地域の山地渓流水で主要溶存無機成分を測定し、流域の岩石風化を評価した。主たる調査域は八甲田西麓山間地の平川支流の小河川浅井川と枇杷田川である。2019年1月から月1~2回の試料採取を実施してきた。年間を通じて主要溶存無機成分には下流に向かう濃度増加傾向が見られ、流下に伴う成分供給が示された。平川本流や堆積岩で形成される白神山地の小河川と比較して、浅井川、枇杷田川とも溶存Si濃度は非常に高く、流域に広く分布する凝灰岩などの風化を反映していると考えられた。Naと塩化物イオンの濃度比から水中のNaの海塩に対する濃縮比を求めた。融雪期にNaの濃縮比は低下し、海塩比に近づいた。一方で、夏にはNa濃縮比が増大した。これは、河川水に占める地下水の寄与比が高まること、水温上昇でアルミノケイ酸塩鉱物の風化が促進されることによると考えられた。