亜寒帯北太平洋における溶存態Ni, Cu, Znの安定同位体比と濃度の東西鉛直断面分布を明らかにした.本研究で観測された亜寒帯北太平洋表層におけるNiとZnの同位体比の変動は,南太平洋表層での先行研究の変動に比べて小さかった.一方,深層におけるNiとZnの同位体比には,亜寒帯北太平洋と南太平洋で有意な差はなかった.これらの元素の同位体比分布を支配するおもな要因は,Niでは表層における植物プランクトンによる軽いNi同位体の優先的な取り込みと深層における再無機化,Znでは表層における生物起源粒子への重いZn同位体の優先的吸着と深層における再無機化と考えられる。亜寒帯北太平洋におけるCu同位体比は,1000 m以浅においては南太平洋の値と同程度であるが,1000 m以深では南太平洋のCu同位体比に比べて高かった.亜寒帯北太平洋深層のCu同位体比は粒子吸着による同位体分別を長時間受けた結果高くなったと考えられる.