太陽系初期に存在した短寿命放射性核種(short-lived radionuclides: SLRs)は,隕石およびその構成物質の高精度な年代計として広く用いられている.また,太陽系形成時のSLRsの存在度は,SLRsの核合成から太陽系形成までの時間を反映するため,SLRsは核宇宙年代計としても利用できる.従来の初期太陽系年代学および核宇宙年代学では,初期太陽系におけるSLRsの均質分布が一般的に仮定されていた.しかし,近年の研究により,SLRs26Alや92Nbが初期太陽系において不均質に分布していたことが明らかになり,これらのSLRsから推定された年代の信頼性が揺らいでいる.我々は,26Alおよび92Nbの初期存在度が,核合成起源のTi安定同位体異常と相関することを発見した.本発表では,SLRsとTi安定同位体異常の相関に基づいた,新たな初期太陽系年代学と核宇宙年代学を報告する.