火星周回機による観測によって、火星の低緯度域の広い範囲に風化層序が存在する可能性が近年強く示唆されている。火星の風化層序は、表層水の地下への浸透に伴う水−岩石反応によって形成されたことが示唆されている。また、層序を構成するAlに富む粘土鉱物層は、河川地形(バレーネットワーク)形成に必要な時間と整合的な温暖期間におけるpH~8の水−岩石反応によって形成されることも示唆されている。しかしながら、実際に酸性流体と火星土壌との化学風化により、風化層序を再現しようとした実験的研究はない。そこで本研究では、火星表面における表層水の地下への浸透に伴う水−岩石反応を模擬したフロースルー型の化学風化実験装置を構築した。そして、二種類の酸性溶液を用いた実験を2年間にわたり行い、酸性溶液の浸透に伴う鉱物組成および間隙水組成の時間変化、深さ変化について調べた。本発表ではそれらの結果を報告する。