日本地球化学会年会要旨集
2021年度日本地球化学会第68回年会講演要旨集
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G02 環境地球化学・放射化学
姉川流域せき止め湖の年縞堆積物に分布するヒ素の化学状態と濃集機構
*益木 悠馬勝田 長貴横山 裕矢梅村 綾子吉田 英一
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p. 25-

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抄録

姉川(滋賀県東部)上流部には、伊吹山の山体崩壊で生じたせき止め湖(約5000年前)の湖成層が分布し、そこには1年に1枚の縞が刻まれる年縞が発達する。走査型X線分析顕微鏡を用いたµ-XRFマッピング分析から、年縞に沿ったヒ素の分布が見出された。バルク試料の逐次抽出法の結果は、ヒ素の主要な起源はケイ酸塩態(69%)、次いで非晶質硫化物態(16%)であることを示す。また、放射光を用いたµ-XRFマッピングとXANES解析から、夏季の菱鉄鉱の葉理の上下に分布するAs2S3(III)の濃集層(層厚約1 mm)は、春と秋の循環期に生じた鉄水酸化物が水塊中の亜ヒ酸塩(H2AsO3-(III))やヒ酸塩(H2AsO4-(V))を吸着、湖底に堆積したのち、間隙水中での硫酸還元で生じたものと推察される。一方、堆積物中に散在する粗粒のヒ素濃集(径0.3 mm)のAsS(II)とAs2S3(III)の共存は、生物起源H2SによるAs2S3(III)の還元で生じたことによると考えられる。

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