大気中の亜鉛の起源と挙動を考察し、揮発性の異なる元素の気化に伴う同位体分別の程度を系統的に理解することを目的に、エアロゾル試料中の亜鉛および鉄の化学種・同位体比分析を実施した。都市大気および亜鉛排出源近傍試料の亜鉛同位体比と大気中の濃縮係数から、完全燃焼由来、部分燃焼由来、非燃焼由来の3種類の亜鉛の起源が推定された。このうち、完全燃焼由来についてガソリン発電機を用いた室内燃焼実験を実施した。鉄・亜鉛同位体比を実験前後の試料で比較した結果、どちらも実験後の方が重い同位体比を示した。この傾向は特に微小粒子の鉄同位体比で顕著であり (-2.19‰→-0.48‰)、これは、ガソリン燃焼における同位体分別効果が小さいことを示唆する。亜鉛は揮発性が高いため、鉄と比較すると実験前後の変化の程度が小さかった。このような鉄と亜鉛の特徴の違いを利用することで、確度の高いエアロゾルの起源同定が可能になることが期待される。