本研究では、白鳳丸KH-17-3次航海で採取したエアロゾル・海水を対象とし、鉄安定同位体比を指標として、北太平洋亜寒帯域におけるエアロゾル・海水中の起源別の鉄の寄与を推定することを目的とした。日本沿岸の鉄濃度の高い海域や北アメリカ西海岸付近において、エアロゾル中の微小粒子は、燃焼起源に由来する低い同位体比を示した。一方、外洋域においては粒径に関わらず地殻平均値に近い同位体比を示し、自然起源鉄の影響が支配的であった。表層海水の溶存鉄の同位体比は、沿岸域では地殻平均値に近い一方、中央・東部太平洋域ではそれよりも高い値を示した。表層海水とエアロゾルの同位体比には関係性が見られず、エアロゾル以外の供給源(沿岸堆積物由来の溶存鉄)からの寄与があることや、生物の取り込みによる同位体分別が起きていることが示唆された。