イラン北西部にはジュラ系~白亜系の石灰岩が広く分布するとともに、第三紀〜第四紀に形成されたトラバーチン(石灰岩質沈殿岩)が広く産出する。トラバーチンは、地下水が湧出する時、溶け込んでいた二酸化炭素が脱ガスし、溶存していたカルシウムが炭酸カルシウムを生成して沈殿することで形成される。この沈殿物は、湧水の化学組成、沈殿生成時の温度などを記録していることが期待される。この地域のトラバーチンについては、Zarasvandi et al. (2017)やMohammadi et al. (2019)などの先行研究があるが、トラバーチンの化学分析、炭素・酸素同位体分析が中心であり、古環境解析への利用を視野に入れた年代測定や、湧水とトラバーチンの両試料の分析結果の直接対比はほとんど行われていない。本研究では、放射性炭素14Cを利用して、イラン北西部に分布するトラバーチンの形成年代の推定を試みた。