蛇紋岩はいくつかの結晶多形を有するフィロケイ酸塩鉱物である.その結晶構造は蛇紋石が生成した熱力学的環境に依存するため,地球化学的調査のために多形を区別することが望まれている.本研究では,原子間の結合状態に由来する固有振動モードを計測する顕微ラマン分光法を用いて蛇紋石の多形を明確に決定することを目的とした.様々なラマン活性振動モードの中で,結晶構造によって変化するフィロケイ酸シートに由来する2つの振動モードを基準とした結晶多形識別が可能であることを見いだした.顕微鏡ラマン分光法は、大きな単結晶もサンプルの前処理も必要としない非破壊法であるため,小さく(<1 mm),壊れやすい,希少,不均一なサンプルに適用できる.本研究は,マントルの地球科学分析や隕石表面,さらには小惑星のサンプルリターンミッションにおける含水鉱物識別などに役立つと考えられる.