大学組織は、教員、学生および事務職員で構成され、特に教員と学生は、基本的には、個人の価値観に基づいて自由に行動することが認められている。しかし現代では、大学を取り巻く種々の環境からの評価や決定が、大学の活動に影響を与える状況になっている。
大学は、高等教育機関であり、研究活動によって真理を探究し、教育活動によって学生を通じてそれを社会に広めることが、組織の目的である。このことは、大学内外の共通の認識であるが、具体的な問題に対応すると、自由なるが故のばらばらの要求が発生する。すなわち、教員や学生は個人の価値観に基づいた活動を望み、環境は大学の機関としての目的達成度上昇を要求する。法人化された大学では、その間の要求の調整が、学長の重要な任務となる。
筆者は、長年国立大学教員として、教育および研究活動に従事した後、9年間地方公立大学学長を務めた。その間大学環境は大きく変化し、それに対応する大学改革を、学長のリーダーシップで実践することになった。本論文は、実践期間中に学長メッセージとして教員に示した私見をまとめたもので、グループ・ダイナミックスのリーダーシップによる制御の一実施例を提供するものである。