宇宙における星・惑星系誕生の場である星間分子雲は,主に水素分子を主成分とするガスと星間塵と呼ばれるサブミクロンサイズの氷微粒子で構成される,極低温(~10K)・超高真空(~10兆分の1気圧)環境である。星間分子雲での分子進化に関して,気相でのイオン-分子反応に関する研究の歴史が長く,これまでに多くの成果が挙げられてきた。一方,水素分子や水,アンモニア,メタノールなど主要な星間分子の多くは気相での生成効率が低く,それらの高い存在量を説明するためには,星間塵上での化学反応が不可欠であることがわかってきた。発表者らのグループでは,氷星間塵表面での分子生成,重水素濃集,反応性脱離という3種の主要な分子進化プロセスについて,それぞれの素過程に着目した実験をおこない,これまでに多くの成果を挙げてきた。本講演では,これまでに得られてきた成果の概要と,新たな分析手法を用いた現在進行中の研究について紹介し,今後の研究への展望を述べる。