主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
回次: 70
開催日: 2023/09/14 - 2023/09/24
p. 126-
蒸発における速度論的同位体効果がもたらす,気相-凝縮相間の同位体分別は,太陽系初期の地球外物質の熱履歴を知る重要な手がかりとなる.同位体効果の大きさは,蒸発分子の質量の逆比の平方根で予測されるが,実験で調べられた分別は理論よりも小さく,物質や温度に依存する.本研究では,遷移状態理論を用いて同位体効果を新たに定式化することにより,以下のことが明らかになった.(i) 高温では,結合解離に活性化障壁がある場合に,蒸発分子の質量の逆比の平方根で予想されるよりも同位体効果が小さい,(ii) 温度の低下とともに同位体効果は減少し,反応座標方向の振動エネルギーに相当する温度で失われる.実験で調べられた金属鉄とケイ酸塩の分別の程度の違いは,イオン結合の解離にポテンシャルの擬交差に由来する活性化障壁があることを示唆する.ケイ酸塩で見られる温度依存性も (ii) と整合的であり,広い温度範囲で同位体効果を調べることにより,検証可能である.