日本地球化学会年会要旨集
2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
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G1 大気とその境界面における地球化学
海洋溶存態有機物から含酸素揮発性有機化合物の光生成への照射強度の影響
*妹尾 翔汰野村 大樹猪俣 敏谷本 浩志大森 裕子
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p. 15-

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抄録

【背景・目的】アセトンやアセトアルデヒドなどの含酸素揮発性有機化合物(Oxygenated Volatile Organic Compounds: OVOC)は大気中に遍在し、対流圏オゾンなどの生成に寄与する(Folkins et al., 1998)。海洋はアセトアルデヒドの放出源、アセトンの放出および吸収源であり、海洋表層におけるOVOCの濃度分布やその支配要因の解明が求められている。海洋表層におけるOVOCの主な生成過程は、微生物による代謝活動や溶存態有機物(Dissolved Organic Matter: DOM)から太陽光による光化学反応が知られている。全球のアセトン濃度のモデル計算の結果、高緯度域よりも低緯度域の方が高いことが示唆された(Wang et al. 2020)。この緯度間の差は太陽光の照射強度と照射時間に起因すると考えられるが、これまで照射時間のみの違いによる光照射量に注目した研究が大半であり、照射強度の違いに注目したものはない。そこで、OVOC生成量への光照射の影響を調べるために、照射強度の異なる光を海洋DOMへ照射し、光生成されるOVOCの定性および定量評価を行った。また、深度の異なる海水を比較することでDOMの構成成分の違いによるOVOC生成量の変化を調べた。【試料・方法】本研究では北海道沖(北緯42.5度、2023年2月採水)の5、20、200、600 mの4深度から採取した海水試料を用いた。孔径0.2 µmのメンブレンフィルターでろ過したろ液に、人工光照射装置を用いて光照射を行った 。300 W m-2と600 W m-2の照射強度の光を、それぞれ0、3、6、12時間、0、6、12、24時間照射した。光照射を行った試料のOVOC濃度を飛行時間型プロトン移動反応質量分析計で測定を行い、光照射によるOVOC濃度の変化を調べた。DOMの光学特性を調べるため、吸光光度計と蛍光分光光度計を用いた。【結果・考察】 光照射実験の結果、5 m、600 m深度の300 W m-2光照射と200 mと600 m深度の600 W m-2光照射において照射量とアセトン光生成量が正の相関関係にあった(R2>0.9)。また、照射量に対する光生成量は200 m深度の300 W m-2光照射で6.73×10-6 ppb/(kJ/m2)、600 W m-2光照射で2.50×10-6 ppb/(kJ/m2)、600 m深度の300 W m-2光照射で8.66×10-6 ppb/(kJ/m2)、600 W m-2光照射で4.41×10-6 ppb/(kJ/m2)となり、300 W m-2照射の方が生成量が大きかった。このことから、アセトンの光生成は光強度の影響を受け、光強度が強いと生成が阻害されることが考えられる。

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