宇宙線から生成される中性子の捕獲反応が隕石や回収試料の同位体組成に与える影響の定量的な評価は,これらの試料の放射性年代測定に極めて重要である.さらに熱中性子と熱外中性子束の比(ep/th)は,試料周辺の水素含有量に対して感度が高いため,中性子捕獲による同位体変動は天体表層に水が存在するかどうかの評価にも利用できる.本研究では6つのeucrite隕石とmesosiderite隕石Vaca Muertaを用いて,熱中性子を捕獲しやすいSmと熱外中性子を捕獲しやすいErの同位体比を測定した.Sm,Erともに同位体異常を示し,計算からep/thが得られた.またモンテカルロコードPhits(Ver.3.34)を用いて,計算されたep/thの再現を試みた. eucriteの親天体の表層に水が存在しない場合の宇宙線照射をシミュレートした結果,測定値から求められたep/thは再現できなかった.これは親天体の表面近くに水素などの軽元素が存在し,熱中性子をより効果的に生成する要因があったことを示唆している.この解釈はDawn missionの観測結果(McCord et al., 2012)と一致している.