海底下の流体移動は、メタンハイドレートの生成・集積に影響を及ぼす。本研究では、地球深部探査船「ちきゅう」により上越沖のハイドレート胚胎域近辺で採取された約140mの堆積物コアから間隙水を抽出し、Cl⁻、主要溶存陽イオン濃度、水素・酸素安定同位体比(δD、δ¹⁸O)、ストロンチウム同位体比(⁸⁷Sr/⁸⁶Sr)を測定した。Cl⁻濃度は深度とともに低下し、淡水が混合した低Cl⁻濃度の水が海底まで供給されていることを示す。Na⁺/Cl⁻、K⁺/Cl⁻は深度とともに増加し、高温下で珪長質岩の変質の影響を受けた流体が上昇していることが示唆された。Na⁺/K⁺地質温度計により見積もった流体の経験温度は約160℃で、海底下約2000 m以深に相当し、新潟地域の石油・天然ガスの根源岩・貯留層である七谷層に対応する。上越沖のNa⁺/Cl⁻、K⁺/Cl⁻、δDは七谷層の地層水の一部と類似し、同様の化学・同位体組成を持つ水が上昇していると考えられる。本研究は、経済産業省のメタンハイドレート研究開発事業の一部として実施した。