考古学遺物などに使用されている金属鉛は,当時の給源となった鉛鉱山のPb同位体比を反映する。このため,金属遺物のPb同位体比分析から,史料の来歴や当時の経済流通を復元することができる。しかし,成因的に類似する鉱山間ではPb同位体比の重複があるため,給源鉱山の特定は難しいこともある。本研究では,多くの鉛鉱山の形成にマグマ活動が関与しているという鉱山地質学的知見に基づき,日本列島内のマグマのPb同位体比の空間分布から,近世~近代日本の内戦期に使用された銃弾遺物の来歴を検討した。新生代の西南日本弧のマグマは,東北日本弧のマグマに比べて,206Pb/204Pbに対して207Pb/204Pb,208Pb/204Pbが高い特徴を有する。東北地方が戦場となった戊辰戦争で使用された銃弾や,九州が戦場となった西南戦争初期の西郷軍の銃弾のPb同位体比などは,これらのマグマのPb同位体比の特徴とおおよそ合致する傾向を示す。