主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2025年度日本地球化学会第72回年会講演要旨集
回次: 72
開催日: 2025/09/07 - 2025/09/19
p. 263-
陸上鉱山で発生する酸性坑廃水はpHが<3.0と低く,高濃度のFe(<5000 mg/L)やAs(<50 mg/L)などの有害元素が含まれることから,環境中に排出するために各元素を沈殿除去させる必要がある。そのうちFe(II)の処理については,従来の薬剤を用いた中和処理に加え,より効率的な処理技術として鉄酸化細菌を利用した酸化処理が用いられる場合がある。微生物による安定的した処理を達成させるためには,季節によらず微生物の活性を維持する必要がある。しかし,実操業における微生物活性と処理効率を関連づける物理化学的条件に関する情報が不足している。そこで本研究では,北海道伊達鉱山に設置された鉄酸化処理槽を対象に,槽内に生成する鉄酸化細菌を含む鉄スラッジ(主成分:Schwertmannite)と実際の坑廃水(Fe:148 mg/L,As:0.24 mg/L,SO42−:587 mg/L)を異なる固液比(1-10 v/v%),pH(3.0, 3.5)で最大120分反応させ,鉄酸化細菌の有無やSchwertmanniteがFe(II)の酸化反応速度に与える影響について調べた。その結果,鉄スラッジを5 v/v%添加した場合,無添加条件に比べてFe(II)の酸化速度が4.5×104倍大きくなり,鉄酸化スラッジの添加量に比例してFe(II)酸化速度も大きくなった。一方,凍結により滅菌処理を施した鉄スラッジを用いた場合,坑廃水中のFe(II)濃度はほとんど変化しなかった。つまり,坑廃水中のFe(II)の減少はSchwertmanniteによる吸着などの無機的な反応によるものではなく,沈殿物中に存在する鉄酸化細菌の作用によるものであると考えられる。また,Schwertmanniteは様々な有害元素の吸着剤として利用できることから,槽内で生成する鉄スラッジの二次利用を検討するために,Asに対する吸着試験を実施した。特に,鉄酸化細菌の活性によって生成される鉄スラッジには細菌由来の有機物(EPS)が高い濃度で含まれており,吸着能や鉱物の安定性(相転移速度)に影響を及ぼす可能性がある。槽内の鉄スラッジをAs(V)の溶液(0.5 mg/L, pH 3-5)と60分反応させた場合,pH 3.0ではAs(V)はほとんど除去されなかった。一般的なSchwertmanniteはpH 3.0未満でもAs(V)を十分に吸着するが(Burton et al., 2009),槽内の鉄スラッジに含まれるEPSがAs(V)の吸着反応を阻害した可能性が考えられる。