抄録
飛騨山地, 青海蛇紋岩メランジュを構成する超苦鉄質岩は著しく蛇紋岩化し, その起源や変成作用を明らかにするための情報に乏しかった. しかし, 塊状のアンチゴライト蛇紋岩と, それに伴うクロミタイト脈から, 初生的なCr/(Cr+Al) 原子比 (0.70-0.77) をコアに保持した組成累帯クロムスピネルと, 包有物としての初生的なパーガス閃石 (~3.8wt.% Na2O) を初めて見出した. 蛇紋岩の源岩は変成作用を被っており, クロムスピネルのコアは低Mg# (0.20-0.43) で特徴づけられる. さらに, リムにおいて初生鉱物包有物のドロマイト化と Ti の付加が部分的に認められる. これらの特徴から, 青海蛇紋岩メランジュを構成する蛇紋岩は, 沈み込み帯のマントルかんらん岩を起源とした低~中程度の温度の変成かんらん岩が, より低温で蛇紋岩化したものと推測される.