地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
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110 巻, 10 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 飛騨外縁帯研究の進展と展望
総説
論説
  • 椚座 圭太郎, 後藤 篤, 板谷 徹丸, 横山 一己
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 110 巻 10 号 p. 580-590
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/27
    ジャーナル フリー
    飛騨外縁帯の青海, 白馬—八方, 蒲田, 伊勢地域から21試料の高圧変成岩類の白雲母のK-Ar年代を測定した. 19試料の年代幅は283-338Maで, 飛騨外縁帯全体が西南日本蓮華帯の約300Ma高圧変成岩類からなる沈み込み変成帯の一部であることが確実になった. 一方, 周防帯の約200Ma高圧変成岩類に相当するものは, 認められなかった.
    蛇紋岩に接触変成作用を与えている花崗岩類のジルコン, モナザイト, トール石のU-Th-Pb EMP化学年代測定は, 蛇紋岩の上昇が白馬-八方地域では古第三紀, 蒲田地域でも白亜紀 (約100Ma) 以降であったことを示す. ペルム紀付加体のオリストリスとして産したりジュラ紀の来馬層群に覆われる蛇紋岩もあるので, 蛇紋岩とそれに取り込まれた高圧変成岩類の上昇および飛騨外縁帯の変形は, ペルム紀から少なくとも古第三紀以降まで続いている.
  • 辻森 樹
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 110 巻 10 号 p. 591-597
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/27
    ジャーナル フリー
    飛騨山地, 青海蛇紋岩メランジュを構成する超苦鉄質岩は著しく蛇紋岩化し, その起源や変成作用を明らかにするための情報に乏しかった. しかし, 塊状のアンチゴライト蛇紋岩と, それに伴うクロミタイト脈から, 初生的なCr/(Cr+Al) 原子比 (0.70-0.77) をコアに保持した組成累帯クロムスピネルと, 包有物としての初生的なパーガス閃石 (~3.8wt.% Na2O) を初めて見出した. 蛇紋岩の源岩は変成作用を被っており, クロムスピネルのコアは低Mg# (0.20-0.43) で特徴づけられる. さらに, リムにおいて初生鉱物包有物のドロマイト化と Ti の付加が部分的に認められる. これらの特徴から, 青海蛇紋岩メランジュを構成する蛇紋岩は, 沈み込み帯のマントルかんらん岩を起源とした低~中程度の温度の変成かんらん岩が, より低温で蛇紋岩化したものと推測される.
  • 大藤 茂, 丹羽 正和, 束田 和弘, 青山 正嗣, 松本 孝之
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 110 巻 10 号 p. 598-607
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/27
    ジャーナル フリー
    飛騨外縁帯の九頭竜地域を構成する地質単元の境界は, 大部分剪断帯であることが構造地質学的調査によって判明した. これらの剪断帯のうち, 少なくとも4条は, 右横ずれ成分をもつ脆性—延性剪断帯であり, 飛騨外縁帯南縁部を画する脆性剪断帯は, 左横ずれ成分をもつ. 右横ずれ剪断帯は, 前期ジュラ紀の花崗岩礫を有する本戸層に変形を与えるが, 前期白亜紀の手取層群に変形を与えない. 一方, 左横ずれ剪断帯は前期白亜紀の手取層群を切る. したがって, 右横ずれ剪断帯は前期ジュラ紀~前期白亜紀に活動し, 左横ずれ剪断帯は白亜紀に活動したと解釈した.
  • 竹之内 耕
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 110 巻 10 号 p. 608-619
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/27
    ジャーナル フリー
    変形相解析に基いて, 蛇紋岩メランジュをなす飛騨外縁帯・青海結晶片岩の変形系列が明らかにされた. 青海結晶片岩では変形小構造の空間分布によって4つの変形分帯がなされ, 変形小構造のうち, 高平均延性度相と低平均延性度相は各帯共通に, 一部の高平均延性度相と中平均延性度相は各帯で特徴的に出現する. また, 時代とともに平均延性度が低下していく条件の下で変形が進行していった. また, 岩相と変形小構造の形成関係を考慮に入れた変形相解析とファブリック解析は, 変形分帯が岩相規制によるものではなく, 変形史を反映したものであることを示している. これらの解析から, 青海結晶片岩は, 層平行剪断で形成された高平均延性度相からなる前期変形時相, 各変形帯特有な発達を示す高~中平均延性度相からなる中期変形時相, 低平均延性度相からなる後期変形時相に区分され, これら3変形時相をへて上昇したと考えられる.
  • 栗原 敏之
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 110 巻 10 号 p. 620-639
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/27
    ジャーナル フリー
    飛騨外縁帯の福地—一重ヶ根地域と九頭竜湖—伊勢川上流地域に露出する凝灰質砕屑岩相のシルル系・デボン系において放散虫生層序の検討を行った. 7つの主要なセクションで認められた放散虫化石群集に基づき, 下部シルル系ランドベリー統から下部デボン系エムス階に対比される計8つの群集帯を設定し, 飛騨外縁帯のシルル系・デボン系凝灰質砕屑岩層の時代を詳細に議論した. 従来, 飛騨外縁帯と黒瀬川帯・南部北上帯のシルル系・デボン系は, 凝灰質砕屑岩層の堆積年代やシルル系石灰岩層の有無等, 相違点が強調されてきた. しかし, 放散虫化石帯に基づく対比から, 後期シルル紀ラドロウ世から前期デボン紀エムス期の凝灰質砕屑岩層は, その発達状況において高い類似性があることが明らかになった. この類似性は, 3地帯のシルル系・デボン系が形成時において深く関連していたことを示す.
  • 束田 和弘, 竹内 誠, 小嶋 智
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 110 巻 10 号 p. 640-658
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/27
    ジャーナル フリー
    従来, 飛騨外縁帯の分布・区分などには多くの混乱と問題があったため, その発達史を議論する上で大きな障害となっていた. 従来飛騨外縁帯として扱われてきた地層・岩体は, 岩相とその占める空間的位置により, (1) 中~上部古生界浅海成層を主体とする地層群 (宇奈月帯構成岩類を含む), (2) 300Ma以前の変成岩を含み, 苦鉄質~超苦鉄質岩を主体とするもの, (3) 後期古生代の石灰岩・チャート・砕屑岩主体層, (4) 苦鉄質岩とペルム系砕屑岩, の4つに大別される. 後三者は, それぞれ三郡—蓮華帯, 秋吉帯および舞鶴帯に帰属を求めることができ, 本論では (1) の分布域を飛騨外縁帯として再定義することを提案し, その模式地は福地・本郷・古川地域とする. 本論の飛騨外縁帯構成岩類は, 宇奈月, 白馬岳, 福地・本郷・古川, 〓谷, 石徹白, 朝日, 伊勢・大野の各地域に分布し, それらは各地域内で断層もしくは剪断帯で寸断されてブロック化している.
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