地質学雑誌
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論説
飛騨山脈北部における1 Ma頃の急激な隆起—北部フォッサマグナ西縁, 居谷里層の礫組成を指標として—
及川 輝樹和田 肇
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2004 年 110 巻 9 号 p. 528-535

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抄録

飛騨山脈の東縁に面した主に礫層で構成される居谷里層の堆積時期は, 層序関係と古地磁気極性から1.65~0.78 Maの間のいずれかとされている. この地層の礫層は, 大部分が茶色の溶結凝灰岩礫 (70%) で構成され, その他, 花崗岩礫 (15%), 緑~黒緑色の溶結凝灰岩・火山岩礫 (5%) も含まれる. これらの礫は, 記載岩石岩学的特徴からすべて飛騨山脈起源である. 花崗岩礫には高率に暗色包有岩を含む特徴的な細粒花崗岩礫があり, 記載岩石学特徴からその花崗岩礫は飛騨山脈北部に露出する黒部川花崗岩からもたらされたと考えられる. 黒部川花崗岩は, 1.5~1.0 Ma (ジルコンFT, 黒雲母 K-Ar年代) の年代値が得られており, これは居谷里層の堆積時期とほぼ一致する. したがって, 居谷里層中から黒部川花崗岩礫が発見されたことは, 1.5~1.0 Ma以降に黒部川花崗岩が分布する飛騨山脈北部の隆起は急激だった事を示している.

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© 2004 日本地質学会
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