抄録
栗駒南部地熱地域に分布する更新統管ノ平層中~上部は,赤倉カルデラ湖のスロープエプロンと堆積盆底の堆積物から構成される.管ノ平層中部に相当するスロープエプロン堆積物は,カルデラ壁崩壊に由来する土石流や混濁流によってもたらされた礫岩や砂岩泥岩互層を主体とし,スランプ構造が発達する.管ノ平層上部に相当する堆積盆底堆積物は,低密度の堆積物重力流や懸濁物質の降下堆積による泥岩が卓越し,植物化石を産する.スロープエプロンと堆積盆底の堆積物には,軽石に富む火山砕屑物が多量に挟在する.スロープエプロン堆積物から堆積盆底堆積物への上方細粒化は,重力的に不安定なカルデラ壁の斜面崩壊や湖水面上昇によって砕屑物の供給域が後退したことに起因する.カルデラ湖の埋積作用には,カルデラ壁の斜面崩壊に由来する基盤岩の砕屑物に加え,カルデラ南東部の後カルデラ期火山活動で生成された安山岩質火砕岩と,カルデラ東方を給源とする珪長質火山砕屑物の供給が関与していた.