地質学雑誌
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論説
南海トラフ沈み込み帯前弧陸域での応力場変遷:熊野市井内浦および紀北町海山観測点コアをきる断層面を用いて
大坪 誠重松 紀生北川 有一小泉 尚嗣
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2009 年 115 巻 9 号 p. 457-469

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抄録

熊野酸性岩類北岩体の北端に近い海山観測点と南端に近い井内浦観測点の2箇所からのボーリングコアを解析し,南海トラフ沈み込み帯前弧域の応力場変遷を調べた.過去の応力はコアを切る断層面から取得したスリップデータに多重逆解法を適用し,現在の応力場はボアホールブレイクアウトから推定した.多重逆解法から,海山観測点と井内浦観測点ともE-W方向の圧縮→NE-SW方向の伸張→N-S方向の圧縮という類似の応力履歴を持っていることが分かった.他方,現在の最大水平圧縮応力(σhmax)は,北側の海山観測点ではE-W方向で,多重逆解法による最終ステージσhmaxとほぼ直交するのに対し,南側の井内浦観測点での現在のσhmaxはNNE-SSW方向で,多重逆解法による最終ステージのものと大きな変化がない.本研究の結果は,西南日本に特徴的なE-W方向の圧縮応力場と,フィリピン海プレートからの圧縮によると考えられるN-S方向の圧縮応力場との境界が,時間とともに南下していることを示す.

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© 2009 日本地質学会
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