地質学雑誌
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論説
熊野井内浦掘削コアから推測する中期中新世熊野酸性岩北岩体の垂直構造と定置過程
中島 隆小泉 尚嗣下司 信夫及川 輝樹新正 裕尚三浦 大助角井 朝昭重松 紀生北川 有一
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2010 年 116 巻 7 号 p. 374-387

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抄録
熊野酸性岩に600メートルのオールコア・ボーリングを実施した.コアの回収率は95%を超え,地表から40 m以深ではほとんど風化変質を被っていない.600 mのコアのうち,地表から深度464.25 mまでは熊野花崗斑岩,464.25 mから600 mの孔底までは尾鷲白浜火砕岩類が分布し,464.25 mの両者の境界は貫入境界である.熊野花崗斑岩は境界近くの急冷部分を除いてはほぼ均質で,石英,斜長石,カリ長石,斜方輝石,黒雲母の斑晶をもつ.尾鷲白浜火砕岩類は塊状の結晶質凝灰岩で,一部軽石に富み溶結構造が顕著な部分や水平な葉理構造の発達した部分を除くとほぼ均質である.尾鷲白浜火砕岩類の基底面はボーリング地点と地表露出している地点の間で700m 以上のレベル差があり,大規模カルデラの存在が推定される.熊野花崗斑岩はコアの深度分布と地表分布を合わせると厚さ1,000 mを超えると思われ,カルデラに埋積した尾鷲白浜火砕岩中に,シル様に貫入した岩体であると考えられる.
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© 2010 日本地質学会
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