地質学雑誌
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116 巻, 7 号
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論説
  • 上手 真基, 山田 和芳, 齋藤 めぐみ, 奥野 充, 安田 喜憲
    2010 年 116 巻 7 号 p. 349-359
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2010/11/11
    ジャーナル フリー
    秋田県男鹿半島に位置する二ノ目潟・三ノ目潟マール湖底堆積物コア試料を採取・観察した結果,両湖沼のコアのラミナが発達する層中に十和田a火山灰(To-a)と白頭山-苫小牧火山灰(B-Tm)の薄層が認められた.これら火山灰を挟在するラミナ発達層について,堆積物薄片観察により微細堆積構造を検討したところ,明暗ラミナセットは年縞であることが明らかになった.また,両湖沼コアについてTo-aとB-Tmの間の年縞の枚数を計数したところ,ともに14年と最大で半年分であった.このことから,To-aがAD915に降下したと仮定すると,B-Tmの降下年代はAD929と推定される.また,ラミナ単層と火山灰の層位関係から降灰の季節性を検討した結果,To-aの降灰は春先である一方,B-Tmのそれは少なくとも春から夏にかけて一度は生じた可能性がある.
  • 丹沢-ざくろ石軽石層
    田村 糸子, 高木 秀雄, 山崎 晴雄
    2010 年 116 巻 7 号 p. 360-373
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2010/11/11
    ジャーナル フリー
    南関東の千葉県銚子地域から東京都江東区,神奈川県鎌倉市,愛川町にかけて分布する上総層群相当層に見出された,ざくろ石を多量に含むという特徴を持つテフラ層について,記載岩石学的特徴,ざくろ石の化学組成,テフラ層の層序学的位置づけなどを検討し,これらのテフラ層が明確に対比されることを示した.そして,ざくろ石の粒径の傾向などから,その給源火山が丹沢に求められることを明らかにした.このざくろ石テフラ層を丹沢-ざくろ石軽石層(Tn-GP)と呼ぶ.Tn-GPの堆積年代は,各地における生化石層序,テフラ層序,古地磁気層序などから,およそ2.5 Maと推定される.ざくろ石を多量に含む極めて特徴的なTn-GPは,今後,南関東の各地の更新統で見出される可能性が高く,新しい層序区分におけるP/P境界付近,あるいは黒滝不整合の時代の指標テフラとして貴重な時間面を提供し,関東平野の都市基盤解明に寄与すると期待される.
  • 中島 隆, 小泉 尚嗣, 下司 信夫, 及川 輝樹, 新正 裕尚, 三浦 大助, 角井 朝昭, 重松 紀生, 北川 有一
    2010 年 116 巻 7 号 p. 374-387
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2010/11/11
    ジャーナル フリー
    熊野酸性岩に600メートルのオールコア・ボーリングを実施した.コアの回収率は95%を超え,地表から40 m以深ではほとんど風化変質を被っていない.600 mのコアのうち,地表から深度464.25 mまでは熊野花崗斑岩,464.25 mから600 mの孔底までは尾鷲白浜火砕岩類が分布し,464.25 mの両者の境界は貫入境界である.熊野花崗斑岩は境界近くの急冷部分を除いてはほぼ均質で,石英,斜長石,カリ長石,斜方輝石,黒雲母の斑晶をもつ.尾鷲白浜火砕岩類は塊状の結晶質凝灰岩で,一部軽石に富み溶結構造が顕著な部分や水平な葉理構造の発達した部分を除くとほぼ均質である.尾鷲白浜火砕岩類の基底面はボーリング地点と地表露出している地点の間で700m 以上のレベル差があり,大規模カルデラの存在が推定される.熊野花崗斑岩はコアの深度分布と地表分布を合わせると厚さ1,000 mを超えると思われ,カルデラに埋積した尾鷲白浜火砕岩中に,シル様に貫入した岩体であると考えられる.
  • 斎藤 誠史, 磯崎 行雄, 姚 建新, 紀 戦勝
    2010 年 116 巻 7 号 p. 388-399
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2010/11/11
    ジャーナル フリー
    南中国・四川省北部の朝天に露出する中-上部ペルム系浅海成石灰岩(層厚約150 m)について,詳細な岩相層序の確立と堆積環境変遷の復元を試みた.中部ペルム系茅口層上部,および上部ペルム系呉家坪層最下部は,多光帯の陸棚で堆積した生砕石灰岩を主体とする.ただし,茅口層最上部(層厚約11 m)は,少光帯以深の斜面ないし堆積盆底で堆積した黒色頁岩・含放散虫チャート互層からなる.岩相変化から,朝天セクションにおいてGuadalupian末期に海進が起こり,その後Guadalupian-Lopingian(G-L)境界を挟み,大規模な海退が起きたことが明らかになった.この激しい海水準変動に伴い,堆積場の酸化・還元条件も著しく変化した.Guadalupian末の海水準上昇は局所的な堆積盆の沈降を,一方,G-L境界を挟んでの海水準低下は地球規模の海退事件を,各々記録していると推定される.
口絵
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