抄録
本論は,これまで知念層の分布が報告されていない沖縄島西方の那覇港沖(水深約19 m)で掘削されたコア試料から発見された知念層を報告する.琉球層群石灰岩直下の未固結細粒堆積物7試料(海底からの深度約28~36 m)について,岩相の検討,石灰質ナンノ化石生層序年代の決定,底生有孔虫化石による堆積環境の復元を行った.その結果,岩相は主に石灰質シルト・砂からなり,知念層の岩相的特徴に類似する.石灰質ナンノ化石分析の結果,石灰質ナンノ化石基準面11から10の間(1.706~1.392 Ma)に対比される.底生有孔虫化石群集は,陸棚斜面上部(水深100~200 m)の砂泥底環境を示唆する.以上の結果から,沖縄島南部で糸満層の石灰岩が堆積した頃,その東西海域の陸棚斜面では知念層に対比できる石灰質シルト・砂が堆積したことが示唆される.