抄録
近畿~中部地方の阪手テフラは,K-AhとAT層準の間の堆積物中に緑色普通角閃石・カミングトン閃石が含まれるという特徴で識別されてきた.阪手テフラと同定されたテフラ,およびその給源と目される三瓶浮布テフラについて岩石記載および火山ガラスの主成分組成分析を行った結果,それぞれが対比できた.火山ガラスが残存しない阪手テフラの場合,緑色普通角閃石の屈折率などで対比しているが,テフラの特徴を明瞭に示すとされる火山ガラスに代わって,阪手テフラに特徴的に含まれる斑晶のガラス包有物の主成分組成で同定できれば,識別精度が向上する.そこで,前出テフラに含まれる緑色普通角閃石中のガラス包有物の主成分組成を分析したところ,組成の特徴がよく一致した.よって,阪手テフラの同定については,緑色普通角閃石中のガラス包有物の組成の比較が有効であることが明らかになった.