抄録
中国山地の山間盆地の岡山県新見市に分布する中新統を本研究で新たに田治部層として定義し,岩相の記載と,浮遊性微化石に基づく生層序の認定を行った.田治部層上部から,初めてBlow(1969)の浮遊性有孔虫化石層序N8帯とOkada and Bukry(1980)の石灰質ナンノ化石層序CN3帯に相当するいくつかの指標種が認められた.それゆえ,この地層は17.0 Maから14.9 Maの間に堆積し,ほとんどの層準は広島県に分布する備北層群是松層に相当する.さらに,岩相と軟体動物化石,浮遊性有孔虫化石そして貝形虫化石に基づき時間空間的な堆積環境の変化を復元した.その結果,田治部層の堆積環境は,温暖な内湾あるいは沿海砂底環境から温暖な陸棚環境へと変化したことが示された.