地質学雑誌
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論説
有機炭素分析による沿岸域に記録された洪水堆積物の特徴
-2003年台風10号,北海道日高沖陸棚の例-
大村 亜希子池原 研片山 肇入野 智久嵯峨山 積
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2017 年 123 巻 5 号 p. 321-333

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抄録

2003年8月の台風10号による洪水時に,北海道日高沖海域に堆積した洪水堆積物の特徴を有機炭素分析から検討した.河口周辺,陸棚,陸棚斜面上部の各堆積環境の洪水堆積物は,通常時の堆積物よりも陸源の有機炭素を多く含み,波浪の影響が比較的少ない環境では,洪水後3年を経過しても陸源有機炭素の割合が高い洪水堆積物が保存されていた.柱状に採取された洪水堆積物では,降雨量に伴う河川流出量の変動を反映して,陸源有機炭素の割合に変動が認められた.洪水により形成された泥層では全体を通して陸源有機炭素の割合が高く,洪水が継続している間連続して陸源物質が海域へ流出し続けたと考えられる.陸源有機炭素の層序的変化の特徴は,地層として保存された洪水堆積物を判別する際に利用できる.

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© 2017 日本地質学会
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