地質学雑誌
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123 巻, 5 号
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特集 水蒸気噴火研究の展開
論説
ノート
  • 阪上 雅之, 國友 優
    2017 年123 巻5 号 p. 283-289
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    Once the volcano erupted, fallen ash accumulated on the ground flew easily even by slight rainfall and generated lahar, which sometimes caused disaster. Therefore, certain criteria are required to evaluate the possibility of lahar after the eruption. It is, however, not well understood under which process or conditions lahar were occurred in the past. For the purpose of future volcanic disaster prevention, we reviewed the historical records of the lahar in japan related to phreatic or phreatomagmatic eruption. Totally 60 records were investigated, and the process of the lahar could be classified into 12 patterns. The most frequent type was secondary lahar (triggered by rain) and the next was primary lahar (induced by hydrothermal water). According to the research of rainfall records on four volcanoes, initial secondary lahar may be produced particularly when the rainfall rate was approximately 11-35 mm/hour which was maximum experienced hourly rainfall after the eruption.

論説
  • 竹下 欣宏, 桐生 和樹, 花井 嘉夫, 北澤 夏樹, 川上 明宏
    2017 年123 巻5 号 p. 291-307
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    2014年9月27日午前11時52分ごろ,御嶽山で水蒸気噴火が発生した.我々は,この噴火による詳細な降灰範囲を明らかにすることを目的として,長野県,山梨県,群馬県,東京都においてアンケート調査を実施した.アンケート結果と既存の研究による降灰確認地点に基づき降灰域を検討した結果,長野県中南部および山梨県の北西部の広い範囲において9月27日の噴煙から1g/m2以下の微量な降灰があったことが明らかになった.27日の噴煙による微量な降灰域は,降灰軸の南側,特に木曽山脈と赤石山脈に囲まれた南北に長い伊那盆地内において広いことが明らかになった.このことは,微量な降灰域は上空の風だけでなく,地上付近の風と地形にも影響を受けることを示している.微量な降灰域に対する地上付近の風の影響は浅間山や桜島のマグマ噴火でも確認されており,細粒な火山灰が降下する際には普通に起こっているものと考えられ,2014年御嶽山の水蒸気噴火でも確認された.

  • 小林 哲夫
    2017 年123 巻5 号 p. 309-319
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    口永良部島・新岳では,2014年8月と2015年5・6月に爆発的な噴火が発生した.噴出物中には新鮮な火山ガラスが含まれていたため,マグマ水蒸気噴火ないしマグマ噴火で,火砕流が発生したと報道された.しかし新鮮な物質は非発泡で,石基はほぼ結晶質であったため,マグマが火道中で固結した貫入岩体の破片と推定された.

    類似した噴出物の代表例は,1966年の爆発的噴火で放出された高温のジョインテッドブロックである.これら岩塊も高温の岩脈が破砕され噴出したものと判断される.爆発の原因は高温岩体と地下水が反応した蒸気爆発と推定され,噴火メカニズムは水蒸気噴火と酷似していた.新岳の歴史時代の爆発的噴火でも,今回と同じような高温の固結岩塊を噴出した事例が多いかもしれない.なお火口から斜面方向に噴出した噴煙はブラストであったと判断できる.2015年噴火のブラストは,100km/h以上の高速で海岸に達した.

通常論文
論説
  • -2003年台風10号,北海道日高沖陸棚の例-
    大村 亜希子, 池原 研, 片山 肇, 入野 智久, 嵯峨山 積
    2017 年123 巻5 号 p. 321-333
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    2003年8月の台風10号による洪水時に,北海道日高沖海域に堆積した洪水堆積物の特徴を有機炭素分析から検討した.河口周辺,陸棚,陸棚斜面上部の各堆積環境の洪水堆積物は,通常時の堆積物よりも陸源の有機炭素を多く含み,波浪の影響が比較的少ない環境では,洪水後3年を経過しても陸源有機炭素の割合が高い洪水堆積物が保存されていた.柱状に採取された洪水堆積物では,降雨量に伴う河川流出量の変動を反映して,陸源有機炭素の割合に変動が認められた.洪水により形成された泥層では全体を通して陸源有機炭素の割合が高く,洪水が継続している間連続して陸源物質が海域へ流出し続けたと考えられる.陸源有機炭素の層序的変化の特徴は,地層として保存された洪水堆積物を判別する際に利用できる.

  • 竹内 誠, 常盤 哲也, 熊崎 直樹, 横田 秀晴, 山本 鋼志
    2017 年123 巻5 号 p. 335-350
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    下部ジュラ系来馬層群下半部の堆積年代に制約を与えるためにジルコンU-Pb年代を測定した.来馬層群の最下部をなす,犬ヶ岳地域の漏斗谷層と来馬地域の蒲原沢層の石質砂岩や凝灰質砂岩から187.7±1.2 Maと189.4±0.9 MaのジルコンU-Pb年代が得られた.また漏斗谷層上位の北又谷層の珪長質凝灰岩と珪長質ホルンフェルスの2試料から187.0±1.6 Maと186.3±1.3 MaのジルコンU-Pb加重平均年代が得られた.この年代は北又谷層より上位の寺谷層から得られた既報の上部プリンスバッキアン階アンモナイト化石の産出と整合的である.これらの年代及び岩相変化より漏斗谷層は蒲原沢層に対比されることが明らかになった.また,来馬層群下半部の漏斗谷層から寺谷層までは層厚が数千mあるが,プリンスバッキアン期(191.4~183.7 Ma)という短期間に急速に堆積したことが明らかになった.

口絵
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