地質学雑誌
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総説
IODP Expedition 323ベーリング海掘削航海の成果と今後の展望:
全球水循環・気候変動に関わる顕著な役割
朝日 博史高橋 孝三岡崎 裕典小野寺 丈尚太郎
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キーワード: IODP, Bering Sea, iNHG, MPT, Sea ice, NPIW
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2018 年 124 巻 1 号 p. 17-34

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抄録

IODP Exp 323ベーリング海航海は,過去500万年間の速い堆積速度の堆積物を精査することで,北半球氷床,中期更新世変遷期(MPT),海氷,中深層水とラミナ堆積物,ベーリング海峡ゲートウェイの発達史等を解明することを目的とした.掘削コアリングは,アリューシャン海盆周辺の深度分布を含む計7サイトで成功裏に実施され,高品質のAPCを主体とする総計660本,5,741m長のコアを取得した.最大到達年代は,バウワーズ海嶺で500万年前,ベーリング斜面域で250万年前で連続的な堆積物を得た.アラスカ氷床融解の当海域への影響は,430万年前に始まり,330から280-250万年前までに強化された.バウワーズ海嶺付近での本格的な海氷発達は,海氷由来化石種の多産イベントにより270万年前と220-200万年前に見られ,MPT以降では北太平洋中層水形成に影響を与えた.強い氷期におけるベーリング海峡閉鎖時には,ベーリング海で北太平洋中層水形成が強まった.

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© 2018 日本地質学会
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