抄録
鶴見火山は九州北東部に位置し, 溶岩ドームと溶岩流からなる成層火山である.山体周辺には, 鶴見火山起源の複数のテフラが分布している.本論文では, これらテフラの分布・層序および14C年代測定による噴火年代から, 鶴見火山の最近3万年間の噴火活動について検討し, 歴史時代の噴火についても考察した.鶴見火山は, 29~7.3 cal ka BPに溶岩の噴出を主体とする噴火を繰り返し, 10.5 cal ka BPの噴火では, ドーム崩壊型の火砕流が発生した.それ以降は, 1.8 cal ka BP, 1.2 cal ka BP, 1.0 cal ka BPに噴火が発生したが, 溶岩の噴出を伴わない小規模な噴火であった.歴史時代の噴火記録として, 711年と867年の噴火が古文書に記されている.これらの噴火は, 地質学的なデータと古文書の記述の解釈から, 1.2 cal ka BPと1.0 cal ka BPに伽藍岳で発生した水蒸気噴火に対応すると考えられる.