地質学雑誌
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108 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 細野 高啓, 牧野 州明
    2002 年108 巻1 号 p. 1-15
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    滋賀県琵琶湖南部地域に位置する後期白亜紀野洲花崗岩体の詳細な岩相区分と岩石記載を行った.野洲花崗岩体は互いに漸移する下部相, 主岩相, 上部相からなる花崗岩類と, それに貫入する花崗斑岩相の4つの岩相に大きく区分される.全岩化学組成と斜長石の化学組成は, 漸移する花崗岩類が分別結晶作用により形成されたことを支持する.またペグマタイトの分布から, 本岩体の花崗岩に著しく発達する斑状組織は, 脱ガスにより生じた可能性が高いと推定される.
  • 丹羽 正和, 束田 和弘, 小嶋 智
    2002 年108 巻1 号 p. 16-23
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    岐阜県丹生川村, 町方地域の美濃帯の珪質泥岩および泥岩から, 前期ジュラ紀を示す放散虫化石が多数得られた.本調査地域の中生界は, 泥岩基質中に主に砂岩, 珪質泥岩, チャートおよび苦鉄質火山岩類を岩塊または岩片として含むメランジュからなる.これらは美濃帯の中期ジュラ紀付加コンプレックスの一部とされている.今回, 町方地域のメランジュ基質の泥岩から得た放散虫化石群集は, 前期ジュラ紀を示し, 過去に報告されてきた周囲の付加コンプレックスのものよりも明らかに時代が古い.また, 町方地域のメランジュは, 周囲の付加コンプレックスのメランジュとは岩相上の特徴にも違いが見られる.
  • 三輪 哲生, 星 博幸
    2002 年108 巻1 号 p. 28-36
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    長野県に分布する塩嶺層火山岩類の26サイトから安山岩試料を採取し, 残留磁化を測定した.すべての測定試片に対し段階消磁を施した結果, 全サイトについてサイト平均磁化方位が決定された.逆→正→逆の磁化極性層序が確立され, それはマツヤマ逆磁極クロノゾーンの上部に対比される.正帯磁はハラミヨ正帯磁サブクロノゾーンまたはコブ・マウンテン正帯磁サブクロノゾーンに対比される.この対比から, 調査地域の塩嶺層火山岩類は下部更新統と判断される(ただし最下部は上部鮮新統である可能性も残されている).北向きの平均磁化方位, および北極と区別できない古地磁気極から, 調査地域では第四紀に地心双極子に対する地殻回転および緯度方向の移動は起きていないと判断される.
  • 小林 岳, 三田村 宗樹, 吉川 周作, / 内山 美恵子, Mieko Uchiyama
    2002 年108 巻1 号 p. 37-47
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    大阪平野で行われた反射法地震探査断面について, 音響的層相の特徴と類似性から地震探査層序区分を行い, この区分と岩相層序との関係について検討した.大阪平野地下第四系の地震探査層序区分は, 連続性の良い反射面がほとんど見られないseismic zone Nと連続性の良い反射面が多数見られるseismic zone Pに2区分され, seismic zone Pは反射面の連続性, 間隔のパターンの変化などからseismic zone Pa, seismic zone Pb, seismic zone Pcに3区分することができる.また岩相層序との対比によって, seismic zone Nは都島累層, seismic zone Pは田中累層に対比され, seismic zone PaはMa -1層~Ma 2層, seismic zone PbはMa 2層~Ma 7層, seismic zone PcはMa 7層より上位の層準にそれぞれ対比可能であると考えられる.本研究の結果得られた地震探査層序区分は, 今後大阪平野で行われる反射法地震探査断面を解釈する上で重要な基礎資料になることが期待できる.
  • 藤沢 康弘, 奥野 充, 中村 俊夫, 小林 哲夫
    2002 年108 巻1 号 p. 48-58
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    鶴見火山は九州北東部に位置し, 溶岩ドームと溶岩流からなる成層火山である.山体周辺には, 鶴見火山起源の複数のテフラが分布している.本論文では, これらテフラの分布・層序および14C年代測定による噴火年代から, 鶴見火山の最近3万年間の噴火活動について検討し, 歴史時代の噴火についても考察した.鶴見火山は, 29~7.3 cal ka BPに溶岩の噴出を主体とする噴火を繰り返し, 10.5 cal ka BPの噴火では, ドーム崩壊型の火砕流が発生した.それ以降は, 1.8 cal ka BP, 1.2 cal ka BP, 1.0 cal ka BPに噴火が発生したが, 溶岩の噴出を伴わない小規模な噴火であった.歴史時代の噴火記録として, 711年と867年の噴火が古文書に記されている.これらの噴火は, 地質学的なデータと古文書の記述の解釈から, 1.2 cal ka BPと1.0 cal ka BPに伽藍岳で発生した水蒸気噴火に対応すると考えられる.
  • 小林 祐哉, 大塚 勉
    2002 年108 巻1 号 p. 59-73
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    美濃帯左門岳ユニットは, 粗粒砕屑岩を主体とする単調な岩相からなり, 放散虫化石の産出地点も限られていたため, 地質構造の形成過程に不明な点が多かった.根尾-和泉地域の左門岳ユニットは, 岩相・構造・変形度から, 構造的上位(北東部)に位置し砂岩が卓越する久沢谷サブユニットと, 構造的下位(南西部)に位置しチャートを伴う河内谷サブユニットに区分される.イライト結晶度と地層の変形の強度は, 構造的下部が露出するユニット南東部に向かってともに上昇する.変形の程度と熱影響の強度が調和的であることは, 左門岳ユニットの古地温構造が, 火成岩の貫入の影響ではなく, 沈み込み過程における埋没変成作用の結果として形成されたことを示している.調査地域南東部の高い被熱温度を示す左門岳ユニットの構造的下部は, 現在同ユニットの南側に露出している舟伏山ユニットの海山の衝突付加の結果上昇したものと考えられる.
  • 小竹 信宏, 奈良 正和
    2002 年108 巻1 号 p. I-II
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    Piscichnus waitemata Gregory, 1991は白亜紀以降の海成層, なかでも浅海相に広く産する生痕化石である. かつて, この生痕化石は荷重痕やポットホールといった堆積構造の一つと考えられてきた. 現在では, 一部のエイ類やセイウチ類などが, 堆積物中に生息する底生動物を摂食した際に形成された摂食痕である可能性が指摘されている (Howard et al.,1977; Gregory,1991), 形成者の特異な摂食様式を反映し, 生痕化石内部には母岩を構成する粒子が再堆積した際に形成された級化構造や平行葉理が見られる. このような内部構造の特徴と円筒形状の形態とが相まって, 物理的堆積構造と混同される一因となった. この生痕化石が化石密集層内に形成されると, 化石の再配列や濃集が局所的に起こり, 通常の堆積メカニズムでは理解できない複雑なファブリックが見られるようになる. P.waitemata のサイズと形成メカニズムを考慮すると, 生痕形成に伴って大量の堆積物が短時間に撹拌され再堆積することは間違いない. この事実は, 堆積物表層部で起こる生物撹拌作用を考える際に, 一部の魚類や海生ほ乳類の摂食行動が決して無視できないことを示唆している.
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