抄録
マイクロクラックの構造はステレオロジーとクラックテンソルにより定量的に評価することができる.花崗岩質岩石(稲田花崗岩)の脆性破壊をマイクロクラックの視点から議論するため,クラックテンソル解析を行った.脆性破壊に伴い発生・進展するマイクロクラックは初期マイクロクラックの方向性を維持しており,その多くは石英内クラックである.マイクロクラックの開口幅が封圧に依存していることから,破壊応力時の非弾性体積歪は封圧の増加に伴い減少する傾向にある.一方,破壊応力時のクラック密度F0 (クラックテンソルの第一不変量)は封圧に依存せず一定であり,脆性破壊はクラック密度がある閾値に到達した時に起こることを示唆している.破壊後に起こるクラック密度の急激な増加は非弾性体積歪みを大きく増加させている原因と考えられる.また,増加するマイクロクラックの多くはクラック密度の高い石英周辺の粒界クラックである.このことより,粒界クラックは断層形成過程において重要な役割を担っていると考えられる.