地質学雑誌
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108 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 遠藤 徳孝, 増田 富士雄, 酒井 哲弥, 横川 美和
    2002 年108 巻7 号 p. 415-420
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    小型の波状砂床は2つに分類することができる.タイプIはある与えられた流速下で十分成長したもので,下流側斜面で砂粒子はなだれによって移動する.タイプIIはアッパープレーンベッドを形成する水理条件から流速が下がった直後からできはじめる波長の小さい発達途中の形態で,砂床上の粒子はシートフロー状に移動する.本研究の実験において,タイプIIは,堆積が生じる場でも発生し,遅い流速下でのタイプIと同様の小規模斜交葉理を形成した.粒子配列解析から,タイプIIはタイプIと違い,粒子の長軸は下流側斜面に対し上流側に傾くことが分かった.従って,粒子配列から斜交葉理がタイプI起源であるか,タイプII起源であるかが分かる.鮮新・更新統掛川層群のタービダイトの中からタイプIIに分類される遷移的なリップルの堆積物を見い出した.
  • 栗原 行人, 柳沢 幸夫
    2002 年108 巻7 号 p. 421-432_2
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    イタヤガイ類卓越貝化石群集が常磐地域高萩地区の中部中新統上部多賀層群下手綱層から初めて報告される.珪藻化石分析により,本群集の産出層準はYanagisawa and Akiba(1998)のDenticulopsis praedimorpha帯(NPD 5B)の上部に相当し,推定年代は約12.0-11.5Maである.本群集は岩相,属構成,および化石の産状から浅海砂礫底の同相的群集と考えられる.本群集中のイタヤガイ類の種・亜種構成は東北本州中部に知られる同時代の浅海砂礫底群集中のそれとは前期中新世最後期~中期中新世初期の門ノ沢動物群の遺存的要素をより多く含み,また中期中新世中期~後期中新世前期の古期塩原-耶麻動物群の特徴的要素をあまり含んでいない点で異なる.この違いは中期中新世後期の気候寒冷化によって東北本州太平洋側の海洋表層水に顕著な緯度的温度勾配が生じた結果かもしれない.
  • 田崎 和江, 縄谷 奈緒子, 国峯 由貴江, 森川 俊和, 名倉 利樹, 脇元 理恵, 朝田 隆二, 渡辺 弘明, 永井 香織, 池田 頼正 ...
    2002 年108 巻7 号 p. 435-452
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    1991年12月,排砂ゲートを設けた出し平ダム(富山県黒部川水系1985年設立)から,初の直接排砂が行われ,その際,多量のヘドロが排出された.その後も1999年までに計8回の排砂が行われた.本研究において,出し平ダム湖および富山湾堆積物の特性について分析を行った.その結果,特に芦野沖にヘドロが堆積していること,そして,富山湾堆積物は他の湾堆積物と比べカオリン鉱物,スメクタイトが多く,出し平ダム湖堆積物と類似した粘土鉱物組成を持つことが明らかとなった.実験より,ニジマスのエラにスメクタイトが吸着することで,エラの変形や脱水を引き起こすことが明らかとなり,また,富山湾で採取されたヒラメのエラ表面が,微細粒子で覆われているのが観察された.以上の結果と1991年から1999年の出し平ダム排砂量とヒラメの漁獲量の変遷には密接な関係が認められ,ダム湖や富山湾底質の経時変化を観察することの重要性が示された.
  • 竹村 貴人, 小田 匡寛
    2002 年108 巻7 号 p. 453-464
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    マイクロクラックの構造はステレオロジーとクラックテンソルにより定量的に評価することができる.花崗岩質岩石(稲田花崗岩)の脆性破壊をマイクロクラックの視点から議論するため,クラックテンソル解析を行った.脆性破壊に伴い発生・進展するマイクロクラックは初期マイクロクラックの方向性を維持しており,その多くは石英内クラックである.マイクロクラックの開口幅が封圧に依存していることから,破壊応力時の非弾性体積歪は封圧の増加に伴い減少する傾向にある.一方,破壊応力時のクラック密度F0 (クラックテンソルの第一不変量)は封圧に依存せず一定であり,脆性破壊はクラック密度がある閾値に到達した時に起こることを示唆している.破壊後に起こるクラック密度の急激な増加は非弾性体積歪みを大きく増加させている原因と考えられる.また,増加するマイクロクラックの多くはクラック密度の高い石英周辺の粒界クラックである.このことより,粒界クラックは断層形成過程において重要な役割を担っていると考えられる.
  • 井上 厚行, 小竹 信宏, 坂庭 康友, 今井 亮
    2002 年108 巻7 号 p. 465-473
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    千葉県房総半島南端に分布する千倉層群白浜層中の白色細脈は,従来付加体堆積物から報告されている鉱物脈とは異なり,カルサイトの外にアポフィライトやヒューランダイト,エリオナイト,アナルサイム,ナトロライト,トムソナイト,チャバサイトなどのゼオライトを主体とする鉱物脈である.随伴するカルサイトのδ13CPDB(-39‰~-5‰)とδ18OSMOW(+24‰~+29‰)値から,脈の生成に関与した溶液中のHCO3-は堆積物中のメタンの酸化あるいは熱分解に由来したものであると推定される.また,脈の生成温度は1℃~48℃と推算された.ゼオライトやアポフィライトを含む鉱物脈に対して推定された生成温度は従来報告されていた冷湧水に伴う炭酸塩鉱物の生成温度よりも高い.この白浜層の鉱物はプレートの沈み込み帯に伴う冷湧水の組成や起源,さらに流動機構に関する多様性を示す一例である.
  • 香束 卓郎, 伊藤 谷生, 相田 吉昭
    2002 年108 巻7 号 p. 474-477
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Early to Middle Eocene radiolarian fossils were newly found from a red shale bed of the uppermost part of the Sarugawa Formation in the Hidaka foreland fold-and-thrust belt, Hokkaido. Considering previous and our results, the age of the Sarugawa Formation was confirmed to range from Turonian-Coniacian to Early-Middle Eocene. This provides fundamental data for the reconstruction of structural settings just before the initiation of growth of the Hidaka foreland fold-and-thrust belt.
  • 堀 常東, 脇田 浩二
    2002 年108 巻7 号 p. 478-481
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Well-preserved Jurassic radiolarians were obtained from two samples of manganese carbonate nodules which were collected from the Northern Chichibu Belt in the Ino district, Kochi Prefecture, Shikoku. These nodules were yielded from siliceous mudstone blocks embedded in the melange matrix. One sample (GSJ R76692) contains 234 species including A rchicapsa? pachyderma Tan, Hexasaturnalis hexagonus (Yao), Transhsuum hisuikyoense (Isozaki et Matsuda), Unuma echinatus Ichikawa et Yao and Tricolocapsa plicarum Yao, and thus the geologic age is assigned to early Bajocian. The other sample (GSJ R76694) contains 59 species with few age diagnostic radiolarians. However, the geologic age is assigned to late Early Jurassic on the basis of the faunal composition.
  • 林 愛明, 付 碧宏, 郭 建明, 曽 慶利, 党 光明, 何 文貴, 趙 越
    2002 年108 巻7 号 p. XV-XVI
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    2001年11月14日午後5時26分(現地時間), 中国北西部青海省と新彊自治区との境界付近の昆崙山中部においてMs 8.1の地震が発生した(第1図). 震源は, チベット北部の山岳地帯であるため, 犠牲者や大きな被害の報告はない. 今回の地震では, 東西走向を持つ昆崙断層(Kunlun fault)沿いに長さ400kmにおよぶ地表地震断層が現れた(第1図, Lin et al. , 2002). 地震直後の現地調査により, 地震断層は全体的に75°~90°北への傾斜角もつ, ほぼ純粋な左横ずれであること, 左横ずれ量は最大で163mに達すること, 地震断層の割れ目帯の幅は数メートルから10kmまで変化すること, などが明らかにされた. 地震断層の西側末端部の延長部についてはまだ未確認であるが, 今回の調査で地震断層は少なくとも400 kmに達することが確認された. この地表地震断層帯の長さと変位量はこれまでに世界中に報告されたものの中でもっとも大きい. ここでは今回の調査で観察した昆崙地震断層の一部を紹介する. 本研究では, 中国地質科学院地質力学研究所・独立行政法人産業技術総合研究所活断層研究センターおよび兵庫県北淡町震災記念公園・野島断層活用委員会のご支援を頂いた.
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