日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住高齢者のQuality of Life(QOL)と認知機能の関連性
小長谷 陽子渡邉 智之太田 壽城高田 和子
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2009 年 46 巻 2 号 p. 160-167

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抄録

目的:長寿社会における高齢者は単に長寿であるだけでなく,よりよく生きることが重要となってきており,高齢者のQuality of Life(QOL)やそれに関連する要因については多くの研究がなされている.地域在住高齢者において,その認知機能がQOLに与える影響について検証した.方法:65歳以上の地域在住高齢者12,059人に調査の依頼をして,電話による認知機能検査(Telephone Interview for Cognitive Status in Japanese:TICS-J)および自記式のQOL質問表のいずれにも回答した1,920人(平均年齢±標準偏差:71.87±5.50歳,平均教育歴:11.08±2.61年)を解析の対象とした.TICS-Jは著者らが開発した電話による認知機能スクリーニング検査であり,QOLはLawtonの概念に基づき,「生活活動力」,「健康満足感」,「人的サポート満足感」,「経済的ゆとり満足感」,「精神的健康」,「精神的活力」の6つの下位項目からなる「地域高齢者のためのQOL質問表」を用いた.分析は,TICS-Jの得点,年齢,教育歴,QOLの下位項目の得点それぞれの相関関係を検討し,性,年齢,教育歴で調整したQOLの各下位項目を従属変数とする重回帰分析を行った.結果:QOL下位項目の得点では6項目のうち4項目で男女差があった.TICS-Jの得点による2群間ではすべての下位項目で有意差が見られた.TICS-JおよびそれぞれのQOL下位項目の間には部分的に相関関係が見られた.性,年齢,教育歴で調整した重回帰分析では,認知機能が高い群では,QOLの6つの下位項目のいずれにおいても,認知機能が低い群より有意に得点が高かった.結論:地域在住高齢者のQOLにおいては,男女差だけでなく,認知機能の違いによる影響が考えられる.今回用いた,電話による認知機能検査やQOL質問表は,地域の高齢者福祉のアウトカム評価に有用である.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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