日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
圧迫性頸髄症において加齢変化は身体機能および能力の術後短期改善に影響を及ぼすか
樋口 大輔内山 靖
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 46 巻 2 号 p. 168-173

詳細
抄録

目的:本研究の目的は,高齢頸髄症と非高齢頸髄症との比較から,圧迫性頸髄症において加齢変化が身体機能および能力の術後短期改善に影響を及ぼすかどうかを明らかにすることである.方法:椎弓形成術を受けた頸髄症者56人(63.1±11.5歳,男性40人,女性16人)を対象とした.すべての対象から研究参加の同意を記名にて得た.調査·測定項目は基礎情報6項目(服部の病型分類,罹病期間,併存症,パブロフ比,頸椎の動的不安定性,頸髄内の高輝度変化),下肢と上肢の運動機能各1項目,感覚機能各1項目,さらに歩行能力2項目,上肢の作業能力1項目とした.基礎情報は術前に,身体機能および能力は術前と術後1カ月に調査·測定した.65歳以上を高齢群,65歳未満を非高齢群と分類したのち,術前の基礎情報,さらに術前と術後1カ月の身体機能および能力を群間比較した.結果:高齢群は27人(72.7±5.2歳,男性16人,女性11人),非高齢群は29人(54.1±8.1歳,男性24人,女性5人)となった.術前の基礎情報において有意差がみられた項目は併存症の有無のみであり,高齢群では63.0%,非高齢群では27.6%の人が併存症を有していた.なお,その併存症の多くは変形性関節症や腰椎圧迫骨折などの整形外科疾患であった.高齢群の下肢運動機能は術前で非高齢群と比較して有意に劣っていたが,術前を基準とした術後1カ月における改善率は同程度であった.歩行能力も術前で非高齢群と比較して有意に劣っていたが,その改善率は同程度あるいは有意に大きかった.また,高齢群の上肢運動機能および作業能力は,術前で非高齢群と同程度であり,それらの改善率も同程度であった.結論:高齢頸髄症では,術前の下肢運動機能および歩行能力は非高齢頸髄症と比較して有意に劣っていたものの,術前を基準とした術後1カ月での改善の割合は同程度あるいは有意に大きく,加齢変化がただちに術後短期改善の負の要因になることはなかった.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top