日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
腫瘍合併リウマチ性多発筋痛症から高齢発症関節リウマチの診断に至った1例
藤井 健司
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2009 年 46 巻 2 号 p. 174-178

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抄録

高齢発症関節リウマチ(elderly-onset rheumatoid arthritis,以下EORAと略す)とリウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica,以下PMRと略す)はしばしば鑑別が困難である.今回我々は,腫瘍随伴症候群のPMRが疑われたが,18F-fluorodeoxyglucose(FDG)positoron-emission tomography(PET)やMRIにて滑膜炎が認められ,最終的にEORAと診断した一例につき報告する.症例は77歳女性.2007年2月より左肩,左上腕,左膝の疼痛が出現した.その後疼痛は項頸部や右肩,右上腕と腰背部,両大腿部にも出現し歩行が困難となった.近医にて消炎鎮痛剤などを投薬されるも改善なく,同年7月に当院へ入院となった.リウマトイド因子と抗CCP抗体は陰性で,理学所見や除外診断からBirdらの診断基準を満たし,PMRとしてprednisolone 10 mg/日を開始し症状は速やかに改善した.経過中肺癌を認め手術にて摘出した.Prednisolone開始後に関節症状や炎症反応の上昇はなかったが,術前のFDG-PETで両肩に集積があり,術後に肩関節と手関節のMRIで滑膜炎と骨びらんがあり,手のレントゲンでも骨びらんが確認されたことから最終的にEORAと診断した.PMRとして治療中も関節リウマチの所見の出現には十分に注意し,定期的な画像検査を行うべきである.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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