抄録
目的:摂食・嚥下障害を有する高度要介護高齢者に対するPEG施行後の転帰について検討した.対象と方法:対象は2006年1月1日から2010年12月31日の5年間に肺炎の診断のもと当院へ入院しPEGが施行された高度要介護高齢者57例(男性24例,女性33例).これらの症例においてPEG施行前のADL,要介護度,基礎疾患,検査成績,摂食・嚥下機能状態(藤島の嚥下グレード分類,VF所見),および,転帰について後ろ向きに調査した.結果:対象者全体の平均年齢は84.7±8.3歳,PEG施行前の総合FIMの平均値は29.7±16.2,要介護度の中央値は4であった.入院時の基礎疾患では,中枢神経変性疾患(アルツハイマー病を含む)と脳卒中後遺症を有する症例が全体の約8割を占めていた.検査成績ではアルブミン値低下とCRP値上昇が認められ,慢性的な炎症反応が反映されているものと思われた.摂食・嚥下機能評価では,藤島の嚥下グレード分類で中等度の障害を認め(障害度区分の中央値は5),VF所見では47/57(82.5%)例に誤嚥,全例に咽頭残留所見が示されていた.PEG施行後の転帰では,生存期間の中央値は451.0±79.8日であり,1年生存率は約56%であった.PEG施行後の死亡件数は51/57件(89.5%)であり,PEG施行日から死亡までの平均期間は518.5±471.7日であった.これら死亡例の死因として肺炎が51例中45例を占めていた(88.2%).結論:著しい認知機能障害とADL低下を有する高度要介護高齢者において,その摂食・嚥下障害への治療対策として施行するPEGはADL向上や肺炎予防への効力は期待出来ず,PEG施行後の転帰も不良であった.